【運動脳】脳の奴隷になるな!人生の主導権を取り戻せ!【アンデシュ・ハンセン著】

脳の奴隷から脳の主へ、運動で取り返す人生の主導権
Brain Science × Evolution

脳の奴隷から脳の主へ。 運動で取り返す
人生の主導権

意志の弱さではありません。
あなたの脳が、現代社会に適応できず
「システムエラー」を
起こしているだけなのです。

  • 頭では分かっているのに、行動できない
  • やるべきことがあるのに、ついスマホを見てダラダラしてしまう
  • 些細なことでイライラし、後悔する選択をしてしまう

もしあなたが、自分の意志の弱さを責めているのなら、
少し視点を変えてみてください。

それはあなたの性格の問題ではありません。

あなたの脳が、本来あるべき
「生物としての機能」を果たせていないだけ
なのです。

私たちは今も「サバンナ」を生きている

少し、時計の針を巻き戻してみましょう。
数百年、数千年ではありません。
数万年前の話です。

私たち現生人類のDNAは、
狩猟採集生活をしていた頃からほとんど変わっていません。

サバンナでは、動くことが「生きること」そのものでした。
獲物を追い、敵から逃げ、新しい住処を探す。

そのため、人間の脳は「体を動かすこと」をトリガーにして、
報酬系(快感や意欲)が活性化するように設計されています。

しかし、現代はどうでしょうか?

デスクワーク、車移動、ソファで動画視聴。
DNAレベルでは「動くこと」を前提に作られているのに、
生活様式だけが極端に「動かない」ものになりました。

このミスマッチが、現代人の脳に深刻なエラーを引き起こしています。


運動不足により脳本来の機能が低下すると、脳は感情のブレーキをうまくかけられなくなります。

その結果、小さな刺激に対しても扁桃体(不安や恐怖の中枢)が過剰に反応してしまい、常に不安やストレスを感じやすくなってしまうのです。

あなたは「脳の奴隷」になっていないか?

ERROR

動かない生活が続き、
脳の機能が低下するとどうなるでしょうか。

筋肉が使わなければ細くなるのと同様に、
脳もまた、使われなければ退化します。

日々の怠けた習慣によって、
脳の基礎体力が低下し、物理的に高いパフォーマンスが
出せなくなっている状態。

そして、過去の習慣によって強化された
「楽な方へ流れる回路」「すぐに怒る回路」といった
「脳のクセ」に、抗う力がなくなっている状態。

これを私は
「脳の奴隷」状態
と呼んでいます。

「こうしたい」「こうありたい」という理想があっても、
退化した脳というハードウェアがその命令を実行できません。

結果として、あなたは自分の人生を生きているつもりで、
実は過去に作られた脳の自動回路に
電気を流されているだけ……という事態に陥ってしまうのです。

脳は「未完成」である
という希望

しかし、絶望する必要はありません。
脳科学には「神経可塑性(しんけいかそせい)」という言葉があります。

脳には、日々の刺激によって
柔軟に形を変える性質があります。

脳は固まったコンクリートではありません。
何歳からでも、その神経ネットワークを組み替え、
構造自体を変えることができるのです。

退化してしまった脳も、適切な刺激を与えれば、
再び力強く成長させることができます。

そのために科学が証明した、最も効率的で強力な方法。
それこそが、私たちのDNAが求めてやまない
「運動」なのです。

『7つの習慣』を実現するハードウェアを作る

刺激 余白(Space) 反応

世界的名著『7つの習慣』に、
人生を変えるための重要な概念があります。

「刺激と反応の間には
余白(スペース)がある」

—— 『7つの習慣』より

嫌なことを言われた時(刺激)、すぐに怒鳴り返す(反応)のではなく、
一呼吸置いて冷静な対応を選ぶ(自由)。

この「余白」を認識し、その中で
「効果的で理性的な行動」を選択できる人こそが、
人生の主導権を握る人です。

この「余白」は誰にでも存在します。
しかし、多くの人がその余白の中で正しい選択ができません。

なぜなら、その余白を使いこなし、理性的な判断を下すための
「脳のパワー」が足りていないから
です。

脳内では常に、理性を司る「前頭前皮質」と、
感情・恐怖を司る「扁桃体(へんとうたい)」が綱引きをしています。

脳の基礎体力が落ちていると、
扁桃体の暴走(強烈な感情)を、
前頭前皮質(理性)が抑え込むことができません。

理性のブレーキが効かず、感情というアクセルが踏みっぱなしになる。
これが、分かっていても失敗するメカニズムです。

今までの挫折は、意志が弱かったからではありません。
「ハードウェア(脳力)」が物理的に不足していただけなのです。

なぜ、脳は「移動」によってアップグレードされるのか?

MEMORY

なぜ運動がこの問題を解決するのでしょうか?
それには、記憶の中枢である「海馬(かいば)」の役割を知る必要があります。

「動くこと」と「覚えること」はセットだった

サバンナで生きていた祖先たちにとって、
「移動する」とは命がけの行為でした。

獲物がどこにいるのか、危険な動物がどこに潜んでいるのか、
そして仲間の待つ場所へどう帰ればいいのか。

移動しながらこれらの複雑な空間情報を「記憶」しておかなければ、
生きて帰ることはできませんでした。

つまり、脳にとって「体を動かす」というシグナルは、
「重要な情報を記憶せよ(海馬を働かせろ)」という命令と同じ
だったのです。

ストレスは海馬を破壊する

現代社会の慢性的なストレス(コルチゾール)は、
この海馬の細胞を死滅させ、萎縮させてしまいます。

海馬が萎縮すると、記憶力が低下するだけでなく、
扁桃体の暴走を抑える機能も失われ、
メンタルが不安定になります。

しかし、運動をすると血流が増え、脳の栄養分が行き渡ります。
これにより、運動はコルチゾールによる破壊から海馬を守り、さらに海馬の細胞を増やして大きくすることが分かっています。

運動によって海馬を鍛え、前頭前皮質とのネットワークを強化すること。

これこそが、刺激と反応の間の余白において、
あなたが本当に選びたい「効果的で理性的な行動」を選択するための
唯一の準備なのです。

メンタルを強くする「脳のワクチン」

さらに、運動には「ストレスに強い脳」を作る驚くべき効果もあります。

「疲れているのに運動したら、余計にストレスになるのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、これこそがミソなのです。

1

自発的に負荷(運動)をかける

心拍数が上がり、脳は「ストレス(コルチゾール)」を感じます。

2

運動を終えて休む

ストレス源がなくなり、コルチゾール値が急激に下がります。同時に脳内で鎮静物質が放出されます。

この「ストレスがかかる→急速に回復する」というプロセスを繰り返すことで、
脳は「ストレスは回復できるものだ」というパターンを学習します。

これを続けていくと、運動以外の場面(仕事のトラブルや人間関係)で
ストレスを感じても、脳は過剰にコルチゾールを出さなくなり、
逆に鎮静物質を素早く出せるようになります。

受動的で終わりのないストレスは脳を壊しますが、
「自ら課して、自ら終わらせるストレス」は、
脳のレジリエンス(回復力)を高める最強のワクチン
となるのです。

人生を取り戻すアクションプラン

脳の奴隷から脱出し、脳の主人となるために。
明日からではなく、今日からできることがあります。

脳の肥料を撒く

有酸素運動

キーワードは「BDNF」

BDNF(脳由来神経栄養因子)は、脳の神経細胞の成長を促す「脳の肥料」。30分程度の軽い運動で分泌され、記憶力や学習能力の土台が作られます。

ストレス耐性

HIIT・ダッシュ

強い負荷からの回復

週に数回、息が切れるほどの高負荷トレーニングを。脳に「強いストレスからの回復」を経験させることで、折れない鋼のメンタルを作ります。

新しい回路の定着

環境の変化

変化こそが定着のカギ

運動で生まれた神経細胞は、使わなければ消えます。「いつもと違う道」「新しいスポーツ」など、変化の刺激で細胞をネットワークに定着させましょう。

最後に:その一歩が、革命の合図だ

ここまで読んで、あなたの心には二つの声が響いているはずです。

「やったほうがいいのは分かった」という理性の声と、
「でも今日は疲れているし、面倒くさい」という感情の声。

まさに今、あなたの脳内で前頭前皮質と扁桃体の綱引きが行われています。

どうか、その「面倒くさい」という感情に
負けないでください。
その感情は、あなた自身ではなく、
退化した脳が見せているただの「幻影」です。

今、あなたが立ち上がり、靴紐を結び、玄関のドアを開けること。

それは単なる運動の始まりではありません。
それは、長年あなたを支配してきた「脳の奴隷」としての生活に対する、革命の宣言です。

最初の一歩は重いかもしれません。
しかし、歩き出せばすぐに脳は変化を始めます。

BDNFが溢れ出し、海馬が脈打ち、理性の回路が繋がり始めます。
足を進めるたびに、あなたは少しずつ、しかし確実に、本来の自分を取り戻していくのです。

脳に支配される人生は、
ここで終わりにしましょう。
これからは、あなたが脳を導くのです。

さあ、準備はいいですか?
最高の未来へ続く道は、
あなたの足元から始まっています。

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